2009年01月号
脳天気 農文化
発行;庭しんぶん
庭プレス社
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090128 シリーズ農字 14「荒」
 草かんむりは「くさ」で、その下の部分は音を示す「こう」であり、この組み合せは、草が地面をおおいしげる意をあらわし、そこから「あれる」に使う。と、辞書にある。
 はてそうか?、地面いっぱいの草、結構じゃないの?、荒れてないよ...、いや、よほどキレイ好きの人が庭にでも侵入し繁茂する雑草を嫌ったんだか...。かなり手前勝手な字であるようで。
 荒れるというか世相騒然ですね。こうなったら流連荒亡(りゅうれんこうぼう/遊びや酒色にふけり家に帰らないこと)を決め込んで、などと思うわけではないが、草かんむりだぞ、もっとグリーンな、つまり生産的な熟語くらい用意しとけよ、であります。なのに次から次からひどいたとえが並ぶ。荒淫、荒誕、荒唐無稽、荒廃...、荒神さまあ、なんとかしてくだせぇ!

 先日東京で地下鉄に乗ったら乗降口の上にお知らせテレビ(?)がついていて「○○線○○分の遅れ、人身事故」・「××線××分の遅れ、人身事故」ってのが羅列される。ジンシン、すべったかころんだか、ではないことだよね。電車通勤の友人は「最近(ジンシンで遅れることが)多くてたいへんなのよね」と言う。「そっか、飛行機に遅れるとたいへんだから早めの電車に乗るよ」と答える。
 空港に早く着いちゃったので本とテレビを見比べながらのひととき。「100年に一度ってくらいの不況なんですから」と政治屋さんがテレビでのたまう。台風なのか...。
 カウンターでコーヒーを所望すれば「○○円になります」と言うので、ん?キミが作るんだから「なる」とはなんだ?いやそうかさっきの台風と同じなのか...。

 感心している場合ではない。他人事ではない。
 荒々しくおおざっぱに言えば「なる」のではなく、今や「する」時代であることを自覚し、「する」対象のモノをいち早くゲットすべき時なのだ。
 育ってしまった「なる」時代の感覚は流れの行き先ばかりが気に「なる」。そして付けるクスリだの癒し効果だのと着ぶくれし、乗せてもらえる舟を探しまわる。

 上流を目指そうではないか、軽装で。

(ナガタ・ま)

「荒」というのは悪くはない。人は大いに「荒れなければ」ならない。こぎれいな庭に雑草が荒々しく入り込むように、取り澄ました偽善の世の中で、大いに荒れまくろう。青年(中高年?)よ「荒野」をめざせ。Go into the wild !

(Niwa Press 社説係・A氏より)

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