2010年07月号
脳天気 農文化
発行;庭しんぶん
庭プレス社
e-mail

100728 シリーズ農字 25「芳」
 くさかんむりと、音を示す「方(ほう)」(においがよい)とをあわせて、草花の「よいかおり」の意味をあらわす...
と辞書。
 意味はほかに、かんばしい、評判がよい、美しいなど良い感じばかりが並び、なるほど名前によく使われるわけですね。
 良いことに関連する形容は、良くない・悪い、もそうであるようにいろんな言い回しがあって、しかし、たとえば芳香といってしまえばそれでなんだかわかったんだかわかんないんだか、であるけれどもとりあえずその場は取り繕えるようなことも多いし、こういったものはヨノナカでチカラを持つ言葉ではありますね。

 モノ作り(そうではない人も?)の宿命は、その周辺がたいへん気になるところで、よい、美しい、とたとえば簡略に言えないひねくれ者であることでしょう。し、たいがい「そうなのか?」と疑ったりもするわけで。
 モノはまだ解析が簡単かもしれません。生きものが関わってくるとなかなかむずかしい。昨日もデパートの中を歩いていると、たとえば芳紀・芳容(死語か?)だなんて感じる洗練された美人さんにぞろぞろ出会うわけだけれども、遠目からでもお近づきになりたいと思える人は多くはない。とつい思い始める。メガネをはずしにかかる。
 小じゃれた空間、小じゃれた人々...、一瞬それを快と感じる。が、快と感じさせるいろいろなコードでそれが成り立っていることに思いをはせる。と、かなりキモイものだなあと。
 少なくとも、そこに居合わせることが偶然である(あるいは無自覚でよい)と思いたいのに、自分がその場、その装置全体の構成部材のひとつに完全に組み込まれている。
 多種多様、ランダムなそのひとつひとつが、なにか決められた法則に従ってそこに「在る」という実感。
 名札を付け制服を着て「前ならい」整列をしている(古いね)洟たれ小学生が見事にそこに再現されている。
 そういう意味では近代都市はそれなりの成功をおさめた、ということになる。で、そのたたずまいが美しくないから手を加えていく、完成度を高める、ということには社会に一定の説得力があるわけだが、そんなこと「ばかり」に着目させられる社会とはナンだ?ということです。

 やはりモノ作り・デザイナーのたぐいはヘンクツであり、街外れにいてナンダ?と怪訝に思われる存在でなくてはいかんのでしょう。

(ナガタ・ま)

庭プレス・トップへ