2008年11月号 / Top にわにわにわ研 |
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発行;庭しんぶん 庭プレス社 |
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081128 イギリス・仕事場としての庭 2 | ||
文・写真/ナガタ・ま(庭プレス)
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▲ 訪れたおもなところ 1、Borth ;前号参照 2、CAT ;前号参照 3、Lammas Project ;→写真 http://www.lammas.org.uk/index.htm 4、CaeMabon ;→写真 http://www.caemabon.co.uk/?page=183 5、Eden Project,Spitalfield は次号で! |
■ラマス・プロジェクト
Lammas Project Sさんの案内で道を迷いながらですが(それが楽しかった)エコビレッジ;ラマス・プロジェクトの予定地に行くことができました。計画の主宰者であるポールがはるばるやってきて敷地を案内してくれ、話を聞くことができたのがラッキーでした。 ウェールズってなんか北海道みたいだなと思ったんだけれど、それはイングランドにくらべて圧倒的に農業地帯だしややビンボーなのかな、羊ばかり目につき閑散とした感じ。農村の狭く曲がりくねった道を車で走るとよくカリカリと灌木の枝が車体を擦る。たいがいそれはブラックベリーなのでした。どこにでも生えてて繁殖力も強く、邪魔だとばかりじゃんじゃん切られるのだそうですけれど、あらもったいない。 着いたときはひどい雨降りで、まずは近くにある倉庫の中で話をしましょうということに。入るとプロジェクトとどういう関係になるのか聞き忘れたのですが、そこは発明家(?)ジョンの仕事場。彼が熱心に作品の説明をし始めました。 そんなんでラマス・プロジェクトの話がすっ飛びそうでしたが、止まない雨の中を敷地見学。広いこと。約30haを購入済みだとか。その一部を使いとりあえず9ファミリーがそれぞれ数haづつを所有する形で、つまり村を構成するかのような計画だとのこと。土地だけで各々確か700万円くらいとか。あなたもどう?って。 わたしはラマス・プロジェクトは「買い」だと思いました。風呂敷の広げ方といいその中身といい、その総合的・統合的な枠組みは、かつて類似の試みが果たせなかった課題を乗り越えていくかもしれない。そのまとめ方が今日的で上手いのかもしれません。なにかカリスマやカミサマが突出しているようでもない(ポールの物腰は魅力的ですが)、手法においてもパーマカルチャーだのダイナミック農法だのが声高に主張されるわけでもない、サスティナブルとかムラとしてのまとまりにしても強引なところが感じられない。でも課題は「全部」なのだということは伝わってくるし、断固実現していこうとする熱意は半端なものではなさそうです。 * ■カエマボン ウェールズらしい?丘陵を北へじゃんじゃん走ってカエマボンに行きました。やはりSさんの案内。彼女が書いた「欧州エコビレッジ深訪」(ビオシティ2008年夏号)を事前に見、いくつか写真があったあのかわいい建物にお目にかかろうというわけです。途中鉱山や採石場のような跡地(荒れ地)もあったけれどおおむね美しい自然が管理されたかたちで展開し、もう少しで目的地というあたりはスノウドニア国立公園内。道路が混むなどということはなかったけれど、休憩や食事に寄った村などは夏休みを過ごす観光客でにぎわっていました。 幹線道路から、だいたいこの辺りだという小さな湖沿いの枝道に入ると、舗装はなくぐねぐねと曲がりやアップダウンを繰り返すややコワイ感じです。林の中だし斜面を切り盛りしているから間違えると転がる。「ここだ入口は」は「なんで?」であって何も標識はありません。そう、ここはとくにコミュニティを名乗ったり目指しているのではないのでそういうものは必要がないわけね。そして今回の訪問(一泊)は年に一度のしかも短期のみ設定された部外者でもオッケーよ、というタイミングでした。ま、それでも主宰者を知っているSさんあってのことですが。で、その主宰者のアーティスト氏とは「なんで?」の分岐点ですれ違ってしまいました。車を止め一応かんたんな挨拶をしましたが、用事ができこれから出かけるとのこと。 ここは彼がごく親しい友人たちに声をかけ協力を得て立ち上げた場所とのこと。ただそれはプライベートな場所というのではなく、運営主体はそうであっても建物建設や敷地内の整備などに広く一般からの参加を呼びかけその体験を持ち帰ってもらうことを意図的に行っているようです。“...それぞれの建物は専門家をインストラクターに招き、ボランティアやコースの受講生によって建てられた。建築の他に木工やアート、ヒーリング、スピリチュアル研修などのワークショップも運営している。〜「欧州エコビレッジ深訪」” 国立公園内での立地ですから初期は非合法建築だったそうです。でも最近その活動の意義が自治体や付近住民の理解につながり合法化されたとのことでした。この建物で本当かなあと思いましたが、法的なところはさておき、有志でこしらえたという建物群はおしゃれで特に街から来た人にはウケるでしょうね。イレギュラーな時期とはいえ私たちを受け入れてくれたスタッフ数人は泊まりの約10人ほどにほどよいお世話をしているという感じでした。ストックしてあった食材の有り合わせ的メニューも付近の野草サラダと組合わさるとなかなか。敷地内の渓流横にしつらえられたホット・タブは魅力的だったけれどいつまでもそこから聞こえてくるお嬢さんたちの歓声に気後れし入浴体験をあきらめた次第。 そうかこういうやり方もアリかという実感がわきましたが、長い目で見れば以後推移がありそうな気もします。社会性という観点からすると受け身というかやや弱い面(善し悪しではなく)もありそうです。しかし「そこ」から入っていこうとする人々の受け皿としては必要・有用なものだなと思えました。 |