2009年04月号
にわにわにわ研
発行;庭しんぶん
庭プレス社
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090428 八重山諸島の旅、島こしょう
文・写真/下山 千絵

 ちょっと前になりますが、春3月中旬、沖縄へ行ってきました。石垣島と竹富島です。初めての南の島です。みんなの「いいよー」なんて言葉に、ついつい行ってみたい欲求が出て行ってきたのですが、行く前からガイドブックやなんやらを見ていて、とっても興味が出てきたものがありました。それは、ピパーチ(※1)と呼ばれている島こしょうです。ヒハーチ、ヒバーツ、ピーヤシなど、いろいろ呼び名があるみたいです。私はこの沖縄特産の島こしょうに興味津々。ガイドブックを見ると、どうやら葉っぱも天ぷらなどで食べられるらしい。それが竹富島の民家の石垣の至るところに生えているらしい。普通、竹富島といえば、綺麗な青い海とか、赤瓦の屋根がメインなのでしょうけれど、私の中ではそれと同等、いや、さらなる興味がピパーチに向いたのでした。

 朝8時頃の石垣島発の船に乗り、竹富島へ出かけました。竹富島は、石垣島からおよそ10分くらい船に乗って着くくらい、石垣島からとても近い島です。島では主にレンタサイクルが活躍するのですが、私は自転車を借りず歩くことにして、まずは島をぐるりと歩きました。平屋で軒が低い赤瓦の屋根に、庭の広い家が多いです。時々キャベツや葉ものの、ごく小規模な畑なんかも見受けられます。綺麗に積まれた民家の石垣と、赤瓦の屋根の組み合わせが、とても印象的です。そして驚いたのは、本当にそのあたりの石垣にピパーチが生えていることです。指で葉っぱをちょっとこすって手の匂いをかいでみると、爽やかなこしょうの香りがします。実もなっています。緑色はまだ熟れていない実、赤いのは熟れた実。赤いのはちょっと触るとべちゃっとしていて、すぐにつぶれてしまいます。ピパーチとして加工するのは、まだ緑色の時に収穫するようです。ここで、「自分で島こしょうを加工してみたい!」という衝動、欲求が芽生えてきてしまいました。しかし、石垣に生えているということは、つまりどなたかの所有物なのです。人の家のピパーチをむやみやたらに採ることは許されません。

左)石垣とピパーチ 右)ピパーチの熟れた赤い実、触るとすぐつぶれる

 いいないいなーなんて思いつつ、お昼ご飯を食べていたら、
偶然、初日の飛行機で隣合わせになって、お話をたくさんしてくれた方と再会しました。そして、ここぞとばかりに彼女に私の欲求をぶつけてみたところ、、、なんと生のピパーチを少量得ることが出来たのです!

無事収穫出来た少量のピパーチの実。時期なのか、赤くなっているものが多かった。

 でも、実はどう加工してよいか分からず、、、家に帰ってきてからネットなどで調べると、「蒸して干して細かく」といったざっくり説明しかありません。結局私は蒸すのが今イチ想像出来なかったので「煎って干して細かく」しました。フライパンを火にかけ、煎っていくとだんだん黒っぽくなっていきます。そろそろかなという適当な感覚で煎るのを終了し、数日間日が当たるところで干しました。そのあとすり鉢でごりごりごりして、一応完成。どの工程も市販品とは違っていたけれど、食べてみると、美味しい!

左)煎ったピパーチ。ちょっとこげちゃっている。右)すり鉢でごりごりしている途中。

 初めてにしては上出来でした。具体的に言うと、私が蒸さずに煎ったせいか、市販品は爽やかな香が強く、辛味があまりないのに対し、私が加工したものは、香が乏しく、唐辛子に近いような強い辛さがありました。でも、どちらも美味しいです。それにしても、こしょうが庭で簡単に採れる、、、なんて魅力的なんだろう!羨ましくて仕方ありません。札幌に戻ってきてからしばらく遠い沖縄に心が向いて、羨ましい気持ちばかりでしたが、ふと、目に我が庭が写り目が覚めました。そう、私にとって最も大切なのは、遠くのピパーチではなくって、目の前の庭でこれから成長するはずの沢山の植物たちなのでした。もちろん沖縄ならではのピパーチは今も魅力に感じるけれども、家の庭にふきのとうが出てきて、春だなーと感じて、ふきのとうのアクの強い春の味を味わうことが出来るのもまた、ここならではだよなと思うと、それ以上の嬉しい気持ちになるのでした。
 とりあえず、少しの間は遠く竹富島に思いを馳せながら、庭で収穫したジャガイモなどに島こしょうをプラスして、
南北の「庭で採れた美味しい」をミックスして楽しみたいと思います。

左)市販品のピパーチの実 右)自家加工のピパーチの実。市販品に比べ、煎ったせいか形がかなりでこぼこ

※1
和名:ヒハツモドキ(サキシマフウトウカズラ)コショウ科
日本列島最西端の八重山諸島など沖縄民家の石垣などに着生している、常緑性木質のつる植物。インドシナ〜マレーシア原産。果実は液果、長さは約3cmほど。冬を越して赤熟する。

参考文献:
『原色版 花づくり庭づくり 沖縄園芸百科』新報出版
『食べられる野生植物大事典 新装版 草本・木本・シダ』橋本郁三著 柏書房

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