2010年4月号
にわにわにわ研
発行;庭しんぶん
庭プレス社
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100428  ロバ農園
北京的農的くらし便り04文/植村 絵美

 CSA;Community Supported Agriculture とは、地産地消をベースとする地域が支える農業の実践と食品流通の社会経済モデルである。1960年代日本の産直提携にはじまるとされ、生産者とそれを支持する地域とで協力関係をつくりあげ、リスクと利益を共有する仕組みである。これは消費者側からの食の安全性と経済成長による土地利用のあり方への疑問から生まれたものとされる。以上、私の通う北京の市民農園 Little Donkey Farm/(以下ロバ農園) の紹介文による。

 ロバ農園は2008年4月北京市郊外鳳凰山のもと230エーカーの土地に設立された。これは、北京市海淀区政府、中国人民大学等の政府機関の協力により運営されている。この農園のコアメンバーは私のコミュニケーションのなさにより(不好中国語)により解明できていないが、北京人民大学生が通い、近所の農民が働いている(雇われている)ことは確かである。よって、農家側から生まれた組織でもなく、農業研究者により設立された農園である。消費者の切実な要求に端を発する活動とは違う。

 さて、ここロバ農園において消費者は2グループに分かれる。1つはコモン消費者ー消費者がシェアホルダーとなり資金を提供。自身は農作業には参加しないが毎週配送される有機栽培の野菜を購入する。もう1つは自給消費者ー30平米の土地を借り(1200元=15000円程度)、野菜やその他の植物を自給する人々。種、温室育ちの苗、有機肥料、水を提供される。ほとんどの人々は後者に属し、今年2年目にして参加者は100世帯、300名にも上るそう。彼らのほとんどは週末農業をする若い中流階級ファミリー(小学生の子供付き)である。未だにものすごい勢いで開発が進む北京暮らしにおいて、子供には自然に触れさせようとする動機から農園を借りる家族が多くいる。

 私も週1度または10日に1度通う週末組である。以前の文章で”北京的農的くらしが始まる”とうっかりカッコつけてしまった自分が恥かしい、ださい、ださすぎる。上で述べたように、全て提供される(決まった野菜の種まきの時期もコントロールされる)のでそれらを自分で手に入れる葛藤を体験していない。また、至難の苗作りも無しである。あー、またしても他力本願、かっこつかないね(田原俊彦/1988)http://www.youtube.com/watch?v=vIu5W_MQF5E&feature=related。では、気持ちを切り替えて、4月に行った作業、その他ロバ農で行われたイベント等ご紹介します。

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3月28日(日) 畑開き

 畑を半分共有の友人ファンダンミン家族と合流。もうすでに畑を耕しおわっている。見たことがないじいさんとばあさんが宇宙語で話しかけてくると思ったらば、中国の方言(武漢)だった。まるでわからないがチャーミング。私のなってない腰つきとくわ使いに黙っていられない。こうやるんだよ、こう!と私の土地も耕し始める、謝謝。午後は食事が食堂にて振る舞われ、完食。(白ご飯、白菜と木耳の炒め煮、豆腐料理、あと2品)、帰宅。

4月7日(水)

 平日の農園はここで働いている人以外誰もいないので、ことはわりとスムーズに運ぶ。気温が上昇してきた(昼15°〜22°前後/夜 5°〜12°前後)この日は3×5mの土地に種を植える。肥料を加え、ほうれん草、紫リーフレタス、ラディッシュ、中国菜(細長いレタス)を直播き。昨年習ったことを復習しようとふるいはどこだ、種のベッドを用意しましょうとかやっていると、ダメ,ダメそんなんじゃないよと、農園の人が無造作に筋巻き、土をかぶせ、土をしっかり押さえつける(足でふむ)。こうなったら郷に入っては郷に従えである。水を5Lバケツ10杯程あげるという。そんなに!と驚いていたら、やはり土がものすごい乾燥しているためである。前回、畑共有のファンダンミンがまだ肌寒いなか早々と種をまき、ちょろちょろジョーロで水をあげていた土地は完全にひび割れており、地球温暖化のイメージで出てくる乾燥地帯のようである。そして自分の土地に水をじゃぶじゃぶ加える(バケツ6〜7杯ほど)。土は泥どろどろ〜となり、なんだかたよりない。

4月18日(日)

 前回種をまいたところは、芽がでている。土がかっからかんであるので、ひび割れた土を押しのけるようにして成長しようとしている。子葉がでたくらい。この10日間北京ではほとんど雨はなかった。農園の人がやってきて、あ〜いいじゃん、いいじゃんといっているのでとりあえずこの言葉を信じる。その他、セロリ、中国菜、キャベツ系の菜もの、レタスの苗を配布されたので、それを植える。中国菜の苗はもう十分食べれるくらいに育っていたので、2株程こっそり持ち帰り食べてみた。新鮮でおいしい、久しぶりの生野菜である。この日はウエルカムパーティーが開かれており、ものすごい人数(300名くらいか)。入り口では人民大学生が入場をとりしまっており(農園メンバー以外は10元=140円)、いくつかのお店(屋台)も出店して平飼い卵などを売っている。食堂では、食べ物ができるまでの映像が流れていたそう。大学関係者の講演会、屋外では子供達がお絵描きをし、木工DIY教室(いすづくり)をうたったワークショップも開かれ、大音響の外国ポップミュージックが響き渡る。まるでテーマパークである。畑を耕す家族もパラソル付きピクニックテーブルを持ち込み、そこで子供達は果物をほうばり、親はせっせと耕す。どうしてか、私は複雑な心境になった。

4月27日(水)

 やはり、平日は誰もいない。2人のおばさんがせっせと何かを植えている以外は農園関係者のみである。強風に煽られながらも間引きの作業をする。この5日間で3日雨がふったので、土はふっくらかと期待をしたが全然かぴかぴである。すべての苗は2cm〜3cmくらいまで伸び、子葉から本葉が展開し始める所である。間引きの作業は土が固いため、根からすっぽりぬけず、ぶちぶちと茎で切れてしまう。まずは水をあげて土を湿らせてからおこなうことにした。次回の苗の定植のために、残る2つの土地3×2mに堆肥を投入。先ほど登場したおばさん達がどこからかふかふかした土を手に入れているので聞いたらあっちにあると、山積みの堆肥を教えてくれる。堆肥というよりかは土に近い(落ち葉等が見えない)これこそ土という濃い茶色した期待にこたえてくれそうな堆肥を投入。今シーズン是非とも頑張ってもらいたい。帰宅後ロバ農園から、トマトとナス、その他夏野菜の苗が出来たというお知らせを頂く。5月の連休か連休明けに定植予定。

 さて、ここにきて改めて土、風土、気候について考えさせられる。この黄土地帯の火山土をつきつけられると今更ながら、トンネル山では大変すばらしい環境で勉強していたことをしみじみと感じてしまった。そして、北海道は山あり、海あり、森林ありの本当に恵まれた環境なのだなぁと目を細める。本当に自然に恵まれている、母なる大地。なんて、すっとぼけたまとめになってしまったが、う〜ん。焼きサバ定食が食べたい。

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編集人註;書き手は2009年度「講座農的くらしのレッスン」参加者。2009年12月より北京在住。

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