2010年5月号
にわにわにわ研
発行;庭しんぶん
庭プレス社
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100528  ロバ農園 5月昼下がり
北京的農的くらし便り05文/植村 絵美

 都市型生活様式がこの村にも浸透している。ここ数ヶ月みていても新しいアパート群はどんどん農園側に押し迫ってくる形で建設。一方で、昔からあるレンガ造りの家がブチ壊されがれきの山となっていく。これには住人が家を壊されるかわりに新しいアパートに移り済み、その際には市政府から月々お金を支給される仕組みがある。住人の年齢は50〜60代が多く、彼/彼女達がロバ農園の主な労働力である。新しいアパートに移り住めば月給くらいの金を支給されるのでそうなればもう農園で働く気はない。昨年実際15名の地元民が働いていたがこの甘い水制作のもと現在は10名まで減ってしまい、さらに減り続けるよう。そんな中ただ土いじりがしたいという昔からの村の住人、元農家のおじさんおばさん達が少なからずいることにこの農園は助けられている。

 そう遠くない30年程前、ここには沢山の空き地と農地があった。このロバ農園のすぐそばには静かなゆたゆたした川が流れており、人々は水浴びをし川は生活の一部だった。当時この農園も空き地。山のすぐ麓にある為に土の栄養分が下流域より劣り農地としては不適とされた。20年程前、この土地は植樹用の苗木を育てる林業地として4〜5年使われた。その後都市化の加速とともにこの土地はある会社に売却された。だが利用されることもなく再び5〜6年の間空き地となっていた。そうこうしている間に川も近隣の影響を受け干からびていった。

 「結局、人々は中国政府や市が安全な食品を作り出し、安全の基準を変えてくれると信じ込んでいる。経済成長が著しいこんな時代にはお金で安全を買うような社会ができてしまった。だからほとんどの人が自ら畑作業をしようとは考えもしない。」

 地元の若手/中年農集団がこの空き地に目をつけ、北京人民大学のウェン教授とともに2008年から小規模農地とする準備を進めた。1年後の2009年、土地所有者から3年間無料(!)の使用許可がおり、北京市海淀区政府から運営資金面の協力もありCSA*農園を開園。この年は71組の市民が自給会員、宅配野菜会員として農園をサポート。余剰作物は地元の村市場にて村民の手に入りやすい価格で販売されていた。2010年の今年は100組の自給会員と200組の宅配野菜会員で構成、会員数が飛躍的に増加。土地も拡大し、鶏300羽放し飼い、豚(子豚を含め35匹程半屋外の豚小屋)、ロバ1匹(屋外)などの家畜動物も増やした。余剰作物は出回らなくなってしまった。(次回の質問:村とのつながりはどうなっているのでしょうかね。)

 「私達は少しでも多くの都市消費者、まずは宅配野菜の会員から土に触れ体を動かす機会をつくり、自分たちが安全な食べものを育て都市近郊の地域農業も支えているという思考に転換させていきたい。宅配野菜会員のほとんどは消費行為によって安全を手に入れているという考えが現実にはありますが、まぁ取り組んでいるところです。また、大学機関を通じて市や中国政府に対し、大規模農業から小規模農業/地域への経済循環型へと方向転換するように話し合いを進めていますが、えぇ、まぁあれですよ。」

 中国政府はアメリカ型の大規模農業を好み最近では山東省にグリーンハウスを6千万元(わ〜!約8億円)で建設。これには、海外輸出向けの有機農業の拡大が背景にある。国内の需給よりも海外輸出のほうが利益率が高い。この6千万元でロバ農園のような小規模CSA農園は100年運営できる。または1年間に100件のロバ農園を運営できる。政府の目は完全に外へ向いている。それから矛先が外へ向いているの他にもあるんですね。

 北京郊外にはいくつかの有機/無農薬農家がいる。中にはものすごく成功している有機農家がある。その農家の消費者ターゲットは北京市内に住む外国人と高所得者。外国人からしてみれば、中国で手に入る有機/無農薬野菜の価格は自国のそれと比べてもあまり変わらない。例えばGreen Cow farm(緑牛農園?)では宅配野菜を半年20000元(260000円)で行っている。それに比べてロバ農園は半年4000元(約52000円)。ロバ農園は価格をおさえることでなるべく多くの北京市民/地元民による消費を狙っている。北京でオーガニックを奨励しているお店や人々も、有機やロハスのアイデアやイメージだけが先行してしまい、アメリカ,オーストラリア等海外からわざわざ有機食品/商品を輸入しており(以前お伝えしたロハオスーパーも輸入の油や加工食品を取り扱っているとの事)、その消費者もそれを手に入れて『オーガニック生活ってやっぱりいいわよね、本当に安全でヘルシーで最高。あら、あなたもロハス?』みたいな感覚が植え付けられてきている。私達は有機/無農薬農作物にも別の選択があり、生産者とつながることで生産過程から見えてくる奥に隠れている様々なことを知ってもらうためにも頑張らなくてはいけない。

 5月下旬土曜日の昼下がり、シーヤンと。彼女は農園主ではないが、人民大学学生博士課程でCSA農業の研究をしながらロバ農園運営に2009年から関わっているそう。私は彼女を農園主だと思い込んでいました。彼女と話した後はうれしさとあつさでドキドキしていたようです。そんなドキドキを少しひきずったまま帰り道、農園の入り口でひなたぼっこをしているおじさんが『おめ〜なんだそれっ』と私の手にぶらさがっているビニール袋満杯の菜もの達をみて言ってきたので「チンゲンサイだよっ」と返しても全く通じずしばしのやりとりがありつつも、やはり通じなくて笑って終了。おじさんの日焼けと歯抜けのコントラストもまぶしかったな〜。

*CSA :Community Supported Agriculture とは地産地消をベースとする地域が支える農業の実践と食品流通の社会経済モデルである。1960年代日本の産直提携にはじまるとされ、生産者とそれを支持する地域とで協力関係をつくりあげ、リスクと利益を共有する仕組みである。これは消費者側からの食の安全性と経済成長による土地利用のあり方への疑問から生まれたものとされる。以上、私の通う北京の市民農園Little Donkey Farm/(ロバ農園) の紹介文による。

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編集人註;書き手は2009年度「講座農的くらしのレッスン」参加者。2009年12月より北京在住。

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