2010年07月号
にわにわにわ研
発行;庭しんぶん
庭プレス社
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100728  三つの関係性
北京的農的くらし便り06文/植村 絵美

 この人はそこでアヒルの卵を売っておりました。メキシコ人かと思わせるアイラインを濃く入れた顔、とんがった麦わら帽子の出で立ちで、見たことのない格好の壷を持ち、そこにはひとまわりも大きな卵がありました。

 「大量のきゅうりが待っているので、それを採りにいく行くついであなたを農園にご案内しますよ。」

 北京中心部から郊外北東へ1時間半ほどでサンリン(径の行人弁なしに林)農園。2004年5月から有機農業をはじめる。50ムー(3.35ha)の土地を所有、30ムー(約2ha)にて野菜をつくり鶏、アヒルを平飼い。その他の土地は栽培用地、建築用地として利用。外部からの農作物汚染の影響を極力抑えるため、農園の四方は壁で取り囲んである。独立灌漑用水と電力供給設備、中規模のバイオガス設備あり。エコロジーとエネルギー循環型の農園をめざし運営している。(サンリンファームブログ:http://blog.sina.com.cn/sunlinfarm

 ブログやチラシ(A4白黒コピー)ではこのように宣伝していました。到着してみるとわりと素朴なたたずまいで少し安心致しました。四方は壁で囲まれているといいますが、四方もこの辺は農家地帯。農薬は地中や空中から侵入してくるとは思います。それから養鶏場がありまして中では黒いにわとりが100羽ほど勢い良くかけまわっておりました。その屋根から半円型のグリーンハウスの骨組みが付け足されておりました。建物のコンクリート熱でビニール内部も暖める仕組みであります。中国でよくみかけるグリーンハウスの構造です。ビニールはまだかかっておりませんでしたがこちらでは、菜もの、二十日大根、ネギ等が。かたわらには広大なトウモロコシ畑。聞き間違えかもしれませんが、これは飼料用トウモロコシで、ひなから育てている鶏、あひる達を畑に放し雑草やトウモロコシを食べてもらうということでした。

 また温床ポリマルチにてキュウリ、トマト、ナス等の夏野菜。この日は一般サイズのコンテナ5〜6箱分のキュウリが収穫されました。「うちの野菜は味が違う、ほら。これは20年前の味で今の若者はこの味を知らないんよ。」と誇らしく、食え食えと3〜4本もキュウリをくれるわけですから、食べられないキュウリは半分かじってズボンのポケットへ隠しました。

 こちらの農園も会員制、CSA型の農業に移行していく様子で現在はnaturaloveという仲介人(ロバ農園2009年参加者)により20件ほどのメンバーに配送しているとのことでした。この仲介人は1人で野菜の分配をし往復3時間の運転後、各家庭へまわるというかなり手間とエネルギー燃焼型の作業をしておりました。この人は以前、カーナビを作る会社でサラリーマンをしていたといいます。仕事を辞め野菜の仲介人をはじめて2ヶ月とのことでしたが非常に効率が悪い。ネットワーク構築や仲間を増やさないと現実的には厳しいものを感じました。この日はあいにくメキシコ風のご主人は見られず詳しいお話はお聞きすることなく終わりました。気になっていたことはこの農園の資本は何かということでした。現在中国では農業参入した企業資本の農業が増えているそうです。ここ数年政府も大規模経営主体の農業を普及させるために農業における企業参入を後押ししているようです。そうなってくると農民は単なる雇われ農民になってしまいます。以前訪れた健康雑誌を作っている会社も農業に参入しようと準備を進めている所でした。そこでも企業側が農を一から勉強することは時間と手間がかかりすぎるので農民を雇う方針で話を進めておりました。この日、農園では2名が働いておりました。そのうち1人はもうひとりの父親で、彼は農民ではなくこの地区の政府役人でありました。ただ農作業が好きなので毎日仕事が終わると手伝いにきているといいます。ここではこの親子を筆頭に作り手にやる気があるので企業参入だとしても人間関係が旨く行っているものと勝手な予想をたててみます。なぜ企業と疑うのかと言うと、メキシコ風のご主人はどうやら北京市内に住んでいるそうなのです。ということは彼は作り手ではないと考えます。

 さて、ここの農園は非常においしい卵で有名であります。有名といってもヨード卵光な類いではありませんが、ロバ農園のある世話好女性がそのように言い、この農園主と仲介人を紹介してくれたものです。現場を見ておいでなさいと。そこでもうひとつ質問なのがこの卵や鶏肉達は今までどのようにして売られていたのかということです。そのうちまたお話を伺うこととしておきます。

 最後にキャベツやニンジン、大根などが栽培されている土地があり、こちらは庭のように雑多に作物がならんでいました。スベリヒユという雑草があります。昨年の農的レッスンで雑草会の高橋さんがこれは食べられるんだよと熱心に教えてくれたことを思いました。こちらでも、農家さんは熱心にこれは薬草であり、食べられるんだよ。と作物として栽培しておりました。またサクランボの木があり何粒もの甘さをほおばりました。そして!!衝撃!!ネットにかかったスズメ達が目にとびこんできます。サクランボがスズメ達に食い荒らされるので急遽ネットを貼ったそうで、もうそれは恐ろしい程に何十羽もひっかかっておりました。まるでスズメの干涸らびた剥製標本。これだけは辞めていただきたいとわめきちらし、何とも惨い光景でありました。それなのに、です。私ときたら別の場所へ移動した後も何度もこの場所にもどりスズメ達をみつめ、サクランボをほおばりました。どうしてもこの甘いサクランボを食べておきたかったのです。それは食欲と思い出と皮肉というものでした。

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参考資料:

『岐路に立つ中国農業〜日中の農家交流の意義を考える』
  農文協論説委員会著 現代農業2010年8月号/農山漁村文化協会
□Sunlinfarm Blog: http://blog.sina.com.cn/sunlinfarm

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編集人註;書き手は2009年度「講座農的くらしのレッスン」参加者。2009年12月より北京在住。

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