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140505 小別沢の山についての妄想〜「馬の道」構想

文;ナガタ・ま(庭プレス社)

 札幌の小別沢地区のおよそ8割?の面積が「山」である。山は西区・中央区側にひろがり大都会に近接している。
 地区の今後を考える際に、既存の農業生産地=畑(平地)に注目するだけでなく、この山の利用について検討する余地がある。

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 小別沢の地形は起伏に富んでいる。農地=田畑と考えれば平地の高効率はあきらかで、急斜面の農地としての整備・維持は困難きわまりないが、そこを「それになりに」使う方法を編み出せば(復旧すれば)、新たな(見失われた)価値が出現するはずである。
 田畑の後背地としての山(=里山)の存在価値は大きいことは自明といってよい。いわゆる里山は、田畑という「主」たる存在の背後にかまえるものという、やや消極的な位置にあったという気がする。それは平場の価値基準といってよいだろう。
この山だらけの小別沢での暮らしは、(今日の主流である)平地のそれを模したものではなく、独自の(例えれば「ゾミア」のごとく)スタイルが立ち上がってしかるべきである(※)。

 山は荒れている!未踏の僻地なら「自然」としてできるだけ放置するのがよいかもしれない。しかし小別沢は里である。
 さて、わたしたちはどう山にさわれるか?

例1:馬の道
 山に踏み分け道をめぐらす。格好良く言えばフットパス。歩くとキモチ良い。
実はそれは山の管理用でもある。除伐採や下草刈り、植林などに必要なものとして整備する。軽トラくらいは通行できるようにする必要があるだろうか(ふだんは車両通行止め)。馬も登場する。森林浴にアニマルセラピーを組み合わせたりする事業が成立するかもしれない。そうでなくとも、この事業準備のために、どこにどんな植物・生きものがいるかの観測〜学習はとてもたのしいように思える。
 大都市・札幌の人々の身近にあるにもかかわらずこの山々は関係がない。田舎にあっても身近にあっても「さわる」手がかりを決定的に欠いている。そんな遠い存在ではなく、街の人々にこそ具体的な関わりの門戸を開く。それも趣味的にではなく、一次産業的な視点で。仕事として。

例2:山地酪農(畜産)というサイドビジネス
 斜面は畑にはタイヘンだが家畜には向いている。小型の牛や山羊などは好んで(?!)山の下草刈りをするだろう。
 山の農的暮らしのバランス状態として家畜は必要不可欠なものであろう。それは酪農専業地帯の広大なありようとは異なる。
 業態としての自立を優先せず、他の事業と組み合わせをはかる。その程度が小別沢の規模としては現実的だし有用でおもしろい。

 (※)たとえば「やぎや」ではコメ食を基本にしない(食べるけれどね)。コメはうまいが山で収穫はできない。できないものを主食としない実験も面白かろう。伝統だとか日本人だからという予条件に依存せず(思考停止せず)、できるだけ相対的な位置に自身を置くということである。
 小別沢はひょうたん島なのである。

 (※)写真は10年前のポルトガル。

 

 

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